鉄の男
STAFF
監督/アンジェイ・ワイダ
CAST
イエジ・ラジヴィオヴィッチ/マテウシ・ビルクート役/その息子マチェック役
クリスティナ・ヤンダ/アグネシカ役
マリアン・オパニア
前年制作した「大理石の男」の続編。ポーランド映画の鬼才ワイダ監督がグダニスクの造船所で起こったストライキに関心を寄せて制作した作品である。
1980年にビルクートの息子マチェクが新生ポーランドを創ろうとして、労働者と学生を連帯させてストに入った。前作の最後にビルクートが死んだことがわかったが、その死の原因は70年のストだった。
ストライキを止めさせるため、とあるルポライターに組合の中心人物マチェク(ビルクートの息子)についての取材をし、過去を暴いて糾弾しろという命令が下る。政治、警察側が強制的にスパイをさせているルポライターが彼の素性や過去に探りを入れるという設定である(このルポライターは前作にも出ていた名前は忘れたw)。
68年に学生のストが、70年に労働者のストがあったものの、一方がもう一方と連帯し助け合わなかったために、失敗してしまった。学生ストに参加した大学生のマチェクは、68年の時に労働者が助けてくれなかったことなどを理由に70年に父ビルクートが所属する労働者が決起した時に力を貸さなかった。そのために、ストライキはうまくいかず、父は銃弾に撃たれて死んだのだ。父の死体は持ち去られ、その後見つかって葬ったが、そのしがない墓さえも、他の墓のためにどこかに移されてしまった(廃棄された?)。
その後、勝利した政府側のコメントをテレビで聞いてマチェクは大暴れし、精神病院に入れられた。精神がおかしくなっているわけではなかったが、冷静に考え直す時間が必要だと友人が判断したためだった。
マチェクは父の意志を継いで、大学をやめ、造船所で働き始める。そこで、映画製作のためにビルクートの生涯を追っていた女学生アグネシカと遭遇した。彼女は息子マチェクをプロデューサー(らしき人)に見せ、撮影の続行を願うが、政府に目をつけられたくない、事なかれ主義のプロデューサーは、今後全ての放送局に立入り禁止と冷たく言い放つのだった。
アグネシカが悲嘆にくれている時(前作であれだけ努力したのだから泣きたくもなる)、マチェクは自分の働いている場所を写真で撮って公開しないか?と話を持ちかける。こうして、二人の交際が始まった。そして、後に二人は夫婦になってしまうのだから、偶然な巡りあわせだ。しかし、彼女が撮った写真を公開してはいけないと上から言われ、再び彼らは落ち込む。
マチェクは孤独な闘争を開始、ストライキを呼びかけるビラを配ったり、ポスターを貼ったりなどして、何度も捕まった。クリスティナ・ヤンダ演じるアグネシカも持ち前の力強さで、何回捕らわれてもへこたれない。マチェクが捕まっていた時は、妊娠中でお腹が大きかったのに重労働をしていた。でも、彼女はとてもかっこよくて、輝いている。その美しさが、涙を誘う。
ルポライターは取材をするごとに、労働者の地位や賃金の低さ、その訴え、ビルクートとマチェクの言い分の正しさに耳を傾けるようになる。さらに、ストに参加している民衆の強い意志、負けても又戦うという強さに自己を悔やむ。ついに仕事を拒否する。彼は苦悩から酒とタバコを浴びるほど呑み、サンドバックにありったけの力で殴り続けた。
しかし、仕事を拒否したところで、所詮マスコミ。民衆からは嘘つきで、どっちに肩入れしても大丈夫な安全な場所にいる不貞の輩だと思われている。
このストライキでようやく労働者側が勝利し、警察社会から民主社会への転換期へ差し掛かることになる。ビルクートの子供マチェクの労働者としての言動から発展して、実は社会の大きな転換期を焦点に当てた大きな作品であるところが、鬼才の鬼才たる所以だろう。
新生ポーランドを讃えた良い作品に仕上がっている。私が評価するまでもなく、この作品は1981年カンヌ国際映画祭グランプリを受賞している。
何気に音楽が良い。
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